建築家、槇文彦さんを追悼して
少し経ちましたが、日本を代表する建築家、槇文彦さんが6月にお亡くなりになりました。
学生時代から敬愛していた建築家でした。
一番好きな作品は、代官山ヒルサイドテラス
おそらく詳細な解説はたくさんありますが、
私なりの言葉でその魅力をお伝えしたいと思います。
私が槇文彦さんの作品から感じる魅力は、
白で表現された、洗練された都市的な建築
内と外、パブリックとプライベートの緩やかな境界
高低差を活かしたアングルの変化
こんな表現がしっくりきます。
ヒルサイドテラスはA~E棟、道路を挟んでF~H棟、その他別館からなる建物群です。
私は、 A棟からE棟へ中庭を介しながら繋がっていく景色がとても好きです。
まず、上り坂の道路沿いに建つA棟。
その高低差を活かした空間、数段上って、また下がって、見える景色の変化が楽しい。
木々と建物にこじんまりと囲まれたサンクンガーデンがとても居心地いい。
自然な動線で続くB棟、道路に面したペデストリアンデッキ。
歩道のさらに内側の歩道。
ウィンドウショッピングで立ち止まってもいいし、屋根がかかって少し内側の領域にいる感じがいい。
続くC棟の見どころは中庭。
入口が数段高くなって道路から見えにくく、中庭を囲うように上部に渡された2階が、ゲートのように内へと誘います。
中庭へ入ると奥へ導くように広がって、D、E棟に囲まれた大きな中庭へと繋がります。
内と外、一連のシークエンスがこんなに美しい建物は、今でも他にそうないのではないかと思います。
こちらの界隈には、素敵なレストランやショップ、そしてこれまた敬愛する建築家でありインテリアデザイナーの池貝知子さんが手掛けられた蔦屋書店もできて、一層魅力的な街ができています。
それもこれも、この美しいヒルサイドテラスがベースにあってこそ築かれたものと思います。
私の本棚。今も大事に持っている「ヒルサイドテラス白書」
建築学校の学生当時、どうやってこんな建築がつくれるのだろうと、資料を探して、(当時はネットがなかった!)この本には唯一図面が載っていて、一番詳しく書かれていました。拡大コピーしてトレースしたり、思い入れのある本です。
25年前につけた付箋が残っていて、開いたページはやはり図面でした。
私は、一度就職した後、建築の道を志し、建築学校に入学しました。
そこで著名な建築家について学ぶのですが、
当時日本で活躍していた建築家のなかで、学生たちの一番人気は安藤忠雄さん。
元ボクサーという異色の経歴に、コンクリート打ち放しへのこだわり、究極の住まい「住吉の長屋」ですから、若者の心を捕らえてしまいますよね。
そんな中、私の断トツは槇文彦さんでした。告白みたい(笑)
槇文彦さん、素敵な建築を残してくださってありがとうございました。
心よりご冥福をお祈り申し上げます。
ヒルサイドテラス第一期が出来て、もう50年ほどになります。
保存の難しさから数々の貴重な建物が取り壊されていますが、ヒルサイドテラスは修復して未来へ残されることを強く願います。