オランダはなぜ住宅不足なのか

アムステルダムに隣接する住宅地で戸建ての建築現場を見つけました。

古くからの都市部では、住宅といえば、日本でいう長屋形式やマンションが大半で、その工事は改修がほとんどです。こちらのような戸建ての新築はあまり見かけませんが、ここに新しく10棟が建築中です。


オランダはここ10年くらいでしょうか、住宅不足が続いています。私が来た2013年には、すでに物件が不足して賃料が高騰していましたが、以降も変わらず賃料は上がる一方、不動産屋がおっしゃるにはそれでも借り手がつくそうです。


なぜ住宅が足りないのか、これには人口事情が関係しています。

オランダは日本と同じように出生率は減少傾向、それにも関わらず人口は増え続けています。
増加の理由は移民です。

2019年には11万4千人増、2020年はコロナの影響で大幅に減少したものの約6万3千人の増加、
移民によってこの30年でなんと30%も人口が増えています。


約30年前、オランダでは少子高齢化とデフレによる国の縮小化という問題に直面しました。
そのために移民受け入れをおこなう政策がとられたのです。
以降、インドネシアから、インドから、その時々の流れで流入してくる国は変化し、現在そのほとんどは、ポーランドをはじめとする他のヨーロッパ諸国などからの移住者で、安定した経済状況や労働を求めてオランダにやってくるそうです。

現在難民は6%程度に留まっていますが、イスラム過激派テロが襲った2017年頃は多くの難民を受け入れてきました。


そして最近はブレグジットの影響もあります。イギリスからオランダへ拠点を移す企業や団体によるものです。
よく知るソニーやパナソニック、他に大きなところでは欧州医薬品庁がロンドンからアムステルダムに移り、そこで働く職員の方々の住宅需要が増えているのです。


では、なぜオランダに移るのか。
私の主観も含めて言うと、外国人が住みやすいからです。
もっといえば、政策によって外国人が住みやすい国づくりを進めたからです。

まずは、言語。
海外生活にとってこれが第一のハードルです。初めの一週間だけでも、借りた家の不具合、ごみの捨て方、各種届け出、等々言葉が不可欠な場面はキリがありません。便利な翻訳ツールもまずはネット環境を整えないと使えません。


オランダは英語を母国語としない国のなかで、英語能力ランキングなんと第一位。移民受け入れ政策の一環で外国人が暮らしやすいよう英語が浸透したと聞きます。確かにヨーロッパを旅していてこれほど英語が通じる国はありません。
年配の方も小さな子供でも相手が外国人とわかれば流暢に英語を話してくれます。もちろん、彼らにとって英語は外国語、私たちと同じなのですが。
私はお粗末な英語力しかありませんが、それでもオランダ語力ゼロで生活が始められたのは、オランダ人がこちらに言語を合わせてくれたからです。

また、オランダ人は日本人からするとぶっきらぼうな物言いに聞こえることがあります。
初めは少し怖いなと感じましたが、それも外国人にも伝わりやすいように、あえてストレートに必要なことを短く伝えるようになった背景があるそうです。

住みやすいと思うことは他にもあります。ごみの分類をあえて大きくして誰でもわかりやすくしたとか(例えば、缶は一般ごみです)、直感的に見てわかる標識が浸透しているとか、外国人にとっての障害があちらこちら取り除かれていますし、治安のよさも安心のひとつです。


さて、こういったわけで人口増加が進むオランダでは、住宅が足らず、2014年以降は新規住宅供給戸数は増加の一途。
主に都市部より周辺に増えていますが、我が家の近くでも数年前まで別な建物があったところに新しいマンションが続々とできています。

人口増加に伴って道路や街も整備されていきます。
アムステルダムでは新しい地下鉄が開通し、郊外への鉄道網が整備が進められています。
こういった変化は活気を感じるものです。

日本はどうかと考えると、新設住宅着工件数は毎年減少しか聞きません。これからは空き家の活用を考えていく時代と言われ、住宅業界に携わる私もそうかそうかと耳を傾けてきました。
人口を増やすという方向、外国人受け入れはいいことだけではないと思いますが、もちろんそれも踏まえて30年も前に実行に移したとは、柔軟で革新的で、オランダはこんなところも大変興味深い国だと思うのです。


さて、建築中の戸建て、どんなお家ができるのだろう。楽しみです。